鬼嫁が作る卵焼きの完成度が増している。これには少なからず驚きを隠せなかった。
あれはそう、10年ほど前のことだったろうか…。
卵焼きがうまく焼けないと嘆く鬼嫁に卵焼きの焼き方を指導した。1人暮らしが長かった俺は、独学ではあったが、人よりも卵焼きを焼く技術に精通していたのだ。
当時はまだ目玉焼きが全盛の時代であり、日本全体でも卵焼きを焼いている家は少なかったと記憶している。
今で言うレシピ本も数少なく、たまに書店で見かけることはあっても5万円という高額な値がついていてとても手が出せなかった。5万円といえば、当時の一般家庭の3ヵ月ぶんの月収に相当する。
くわえて卵焼きを焼くという行為自体、あまり褒められたものではなかった。焼いているところをもし警察に見つかったら…最低でも5年の懲役は間逃れない。そんな時代だ。
それでも俺達は卵焼きを焼き続けたんだ。
「卵はまぜすぎない!まぜる時はゆっくり、それでいて速く、だ。」
「フライパンはよく熱すること!卵とフライパンのファーストコンタクト…すべてこれで決まる」
「だぁかぁらぁ~。そうじゃないっての!このクリンってなるところをこうして…」
「もっと腰を使って!フライパンうかせて!ってさっきも言っただろ!このぉおたんこなす!」
キッチンに怒声が飛ぶ。指導は連日深夜まで続けられた。来る日も来る日も俺たちは卵焼きを焼き続けたんだ。
じゅうじゅうに焼けた卵が容赦なく飛んでくる。鬼嫁の腕はヤケドやアザだらけだった。すでに何百という卵を割っているその指の先からは血がにじみ、卵の黄身を赤く染めた。
それでも鬼嫁は決して弱音をはかなかった。最後まで俺の指導に耐えつづけた。
1年後、修行の甲斐があり、鬼嫁はやっと卵が割れるようになった。
鬼嫁の卵焼きの完成度が増していること以外、すべてフィクションです。
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あれはそう、10年ほど前のことだったろうか…。
卵焼きがうまく焼けないと嘆く鬼嫁に卵焼きの焼き方を指導した。1人暮らしが長かった俺は、独学ではあったが、人よりも卵焼きを焼く技術に精通していたのだ。
当時はまだ目玉焼きが全盛の時代であり、日本全体でも卵焼きを焼いている家は少なかったと記憶している。
今で言うレシピ本も数少なく、たまに書店で見かけることはあっても5万円という高額な値がついていてとても手が出せなかった。5万円といえば、当時の一般家庭の3ヵ月ぶんの月収に相当する。
くわえて卵焼きを焼くという行為自体、あまり褒められたものではなかった。焼いているところをもし警察に見つかったら…最低でも5年の懲役は間逃れない。そんな時代だ。
それでも俺達は卵焼きを焼き続けたんだ。
「卵はまぜすぎない!まぜる時はゆっくり、それでいて速く、だ。」
「フライパンはよく熱すること!卵とフライパンのファーストコンタクト…すべてこれで決まる」
「だぁかぁらぁ~。そうじゃないっての!このクリンってなるところをこうして…」
「もっと腰を使って!フライパンうかせて!ってさっきも言っただろ!このぉおたんこなす!」
キッチンに怒声が飛ぶ。指導は連日深夜まで続けられた。来る日も来る日も俺たちは卵焼きを焼き続けたんだ。
じゅうじゅうに焼けた卵が容赦なく飛んでくる。鬼嫁の腕はヤケドやアザだらけだった。すでに何百という卵を割っているその指の先からは血がにじみ、卵の黄身を赤く染めた。
それでも鬼嫁は決して弱音をはかなかった。最後まで俺の指導に耐えつづけた。
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